糸には大きく分けて、短繊維糸(スパン糸)と長繊維糸(フィラメント糸)があります。
短繊維糸は1本の繊維の長さが短く、ワタの状態から紡いで(紡績して)作られた糸です。よって「紡績糸」と同義です。
天然繊維のほとんどは繊維長が短いので、短繊維糸(スパン糸)ということになります。天然繊維でもシルクに限っては長繊維糸(フィラメント糸)になりますが、シルクにも短繊維糸はあります。
長繊維糸と比較して、短繊維糸は繊維間の隙間が多く、結果として膨らみのある糸になります。
また、いくつかの異なる素材を混ぜて紡績すれば(混紡糸)、複数の素材の特性が付与された糸、あるいは一つの素材の短所をもう一つの素材が補ってくれる糸を作ることが可能です。例えば、綿とポリエステルを混紡すれば肌なじみが良くて乾きやすい糸ができる、といったように。
長繊維糸でも複数の糸を撚り合わせること(交撚糸)は可能ですが、その場合二つの素材の染色性が異なることが多いので、染色した後には素材の違う糸同士が撚り合わさっていることが明らかな見え方になります。
極端な例えですが、理容店の店先でくるくると回転している看板のイメージです。
化学繊維は基本的に長繊維の状態で生まれますが、短繊維がないわけではありません。その場合には長繊維をわざわざカットして短繊維(カットファイバー)にしています。
仮に単一の素材の長繊維糸と短繊維糸を比べた場合でも、短繊維糸の方が染め上がりでムラを感じる、毛羽が現れるため、天然繊維のような自然な印象を表すことが可能です。
最後に、短繊維での混紡糸と、長繊維での交撚糸の見え方のイメージをイラストにしましたのでご覧ください。