今回は「撚糸の仕組み」としましたが、撚糸機の取扱説明書のような解説をするつもりはありません。
とりあえず、まずは身近な現象を例えに「撚り」についてお話ししたいと思います。
「撚り」とは「ひねる」ことであり、「ねじる」ことです。普段の生活において、あえて何かを「ねじる」ことはなくても、結果として「ねじれてしまう」ことがあります。しかし、その「ねじれ」が僅かであるために、「ねじれている」ことがわかりにくい場合もあります。
そこであくまでも例えですが、「ねじれ」がわかりやすく、撚糸機の構造にも似ている現象として、下の写真をご覧ください。
バームクーヘンのようなレコード巻になっている紙テープをテーブルに置いて上に引き上げていますが、螺旋を描いている、ねじれていることがわかります。これが「撚り」です。
写真を2つ並べてありますが、それぞれレコード巻の表裏が異なります。左右の写真で紙テープがほどける方向が異なるのがおわかりいただけるでしょうか。左の写真ではレコード巻からテープが時計回りにほどけていますが、右の写真では反時計回りにほどけています。その結果、それぞれのテープが描く螺旋の回転方向も反対になっています。
この例では紙テープに既に癖が付いているためあまりに誇張されてしまっていますが、このように何かに巻かれている細くて長いものを垂直方向に引き上げると「撚り」が入ってしまいます。今回はその撚りを見やすくするために紙テープを使いましたが、紙テープのように平たくない通常の糸であっても、撚りが入っていることが見えにくいだけで、同じように撚りが入ります。
但し、こうして引き上げるだけでは撚りの回数はごく僅かですし、その回数をコントロールすることも出来ません。
そこで撚糸機は、糸(紙テープ)が巻かれたボビン(レコード巻)を回転させて、更に糸を高速で引き上げ、意図通りに撚りが入るようコントロールしています。
ボビンの回転スピードも引き上げるスピードも一定が保たれていれば、糸の撚糸回数も一定に保たれます。
そして、たとえボビンの回転スピードが同じであっても、引き上げるスピードを遅くすれば単位時間あたりでボビンが回転できる回数が増えますから撚りが強くなり、スピードを速くすればボビンが回転できる回数が減りますから撚りが甘くなります。
このような理屈から、同じ長さ(=重さ)でも、撚りが強いほど出来上がる時間が長く掛かり、撚りが甘いほど時間は短くて済むわけです。
以上が撚糸(撚糸機)の基本的な仕組みです。
このように撚糸の仕組みまでを理解する必要はないのですが、例えばボビンを逆さにしただけで撚りの方向(ねじれる方向)が変わるとだけ知っておくと、場合によってはお使いの糸の上下を逆さにしただけで使いやすさが変わることもありますので、知っていて損はないと思います。