糸の太さのことを「番手(ばんて)」と呼びます。
原料としての糸であれば、その番手は素材によって以下の4種類のいずれかを用います。
・デシテックス(あるいはデニール)
・綿番手
・毛番手(メートル番手)
・麻番手
まずはデシテックスとデニールから。
長繊維糸に使われる単位です。
かつて日本ではデニールが使われていましたが、20年ほど前に国際的な統一基準として日本でもデシテックスが採用されました。
1デシテックスは長さ10000mで重さ1gになる太さ。
1デニールは長さ9000mで重さ1gになる太さです。
デニールで表していた歴史が長く続いたため、今でも繊維業界ではデニールを使う方が多くいます。
また、デニールはパンストやタイツの厚さを表す目安にも使われています。たしかに同じように編めば、糸が太い方が編地は厚くなりますが、それはあくまでも目安。本来デニールは糸の太さを表す単位です。
デニールをデシテックスに換算するときは、デニールに1.11をかけてください。
150dの場合、150×1.11で167tになります。
逆にデシテックスをデニールに換算するなら、デシテックスに0.9をかけることになります。
通常はこのようにデシテックスを「t」で表すことが多いのですが、本来それは正しくありません。
「t」ではテックスになってしまい、1テックスならば1000mで1gです。
ですから、10分の1を表すデシ「d」を付けて「dt」が正解となります。
しかし、10000mで167gだから太さは167dtなどと重さを太さにしてしまうというのは不思議な話です。
一般的に太さというのは断面積の大きさ、仮にその糸の断面が真円だったとするなら直径です。
重さを太さにしてしまうこの考え方では比重が無視されています。
例えば、ポリエステルの比重は1.38、ポリプロピレンは0.91です。それでも長さと重さが同じ場合、その違いは断面積に反映されていることになります。
極端な例えをするなら、鉄と発泡スチロールを同じ長さにも関わらず同じ重さにするには、発泡スチロールの方を遥かに太くしなくては同じ重さにはならない、というわけです。
実際に私のお客様がポリエステルで作っていた生地を軽くしようとポリプロピレンに変えて試作したのですが、同じ番手の糸を使用してしまい、生地としての重さは同じで、かなり厚みのある生地になってしまいました。
最後に、天然繊維で唯一の長繊維であるシルクについて。長繊維糸なので古くからデニールで測定されていますが、例外的に「中(なか)」を使います。「中」とは、言い換えれば「平均」です。
シルクは天然繊維のため太さが若干不均一です。例えば約3dの長繊維を7本合わせて約21dの糸にした場合、実測では20〜22dとなり、間を取った21中と表記されます。
前述したデシテックスとデニールの単位変換を、計算しなくても一目でわかる早見表を用意しましたので、下をご覧ください。
別の回で説明している他の番手の単位も含めた早見表になっています。
但し、一点だけ注意点があります。
冒頭で説明しました通り、長繊維糸は長らくデニールを用いて生産そして流通していたところに、後々になって単位表記のみをデシテックスに変更することになりました。
デニールを1.11(無限小数)倍してデシテックス換算すると必ず端数が発生します。しかし、その端数の処理については特段のルールが定められることのないまま、例えば500dを560dtにするなど「キリの良い数字」にする事例が多く現れました。
この換算表では現在の慣習に合わせて記載しており、デニールの1.11倍と合致しない場合もありますので、あらかじめご了解ください。